「事実婚のパートナーへの遺産の残し方:法的なポイントと対策を解説」

相続コラム

2023.01.14

事実婚のカップルが共有する財産や生活において、遺産の残し方にまつわる不安がつきまといます。この記事では、事実婚のパートナーへの遺産承継における法的な問題に焦点を当て、具体的な対策を分かりやすく解説します。不安を解消し、パートナーへの承継手続きを安心して進めるための一助となるでしょう。

パートナーへの遺産の残し方:考えられる希望

・財産の平等な相続を希望

長い年月を共に過ごしたパートナーに対して、財産を平等に相続させたいという願望があります。これにより、相続において公正な扱いを受けることが期待されます。

・生活の安定を望む

残されたパートナーの経済的な安定を維持させたいという希望があります。住居や生計に関わる資産や権利を相続させ、生活が安心できるようにしたいと考えることがあります。

・互いに相続対策を希望

互いが相続対策を行うことで、相手に安心感をもたらします。

現実には相続対策を講じていない人が多い

愛する人との未来に対する不安や希望は人それぞれですが、相続対策を実際に進めていない人が多いのが実際の状況です。特に法的な手続きや書類作成は馴染みがなく、相続対策を遠ざける要因となっています。また、パートナーに相続対策してほしいと考えていても、提案することも容易ではなく、相続に関する話題が難しいと感じられることも一因です。

対策していないと、これが起こります!

パートナーが認知症や疾病で判断能力を喪失した場合

・資産凍結:事実婚カップルは、判断能力を喪失したパートナーの預金や不動産など資産管理を本人の代わりに行うことが難しいです。そのため、主な生計者が判断能力を喪失した場合、本人や相手の生活に支障をきたします。

・医療の同意ができない:事実婚カップルでは相手の手術の同意や面会について、籍が入っていないことを理由に断れるケースがあります。

パートナーが亡くなった場合

・相続権がない: 相続対策を講じない場合、婚姻が成立していないと相続権がありません。相続権がないと、パートナーへの遺産承継ができません。

・家を失う: 特に住宅などの資産が共有されている場合、相続権がないことでパートナーが住まいを失う可能性があります。

・寄与分と相続トラブル:相続権が制限される場合でも、長い間共に生活してきた相手が家庭や生計に寄与してきた場合、寄与分が認められる可能性があります。しかし、これは法的な手続きがなければ確認が難しく、紛争の元となります。

相続対策

これらの問題を未然に防ぐために、事実婚カップルにおいて相続対策は特に重要です。

遺言書の作成で対策

遺言書は、自身の死後に資産を誰にどのように残したいか希望を記す文書です。遺言書があれば、亡くなった際の法定相続人の遺産分割協議をせずに、遺産承継ができます。相続権がないパートナーに遺産を残すための有効な手段です。

家族信託で対策

家族信託は、信託契約に基づき信頼できる人(受託者)に自身の財産を預けて、管理・使用してもらう仕組みです。事実婚カップルにおいては、パートナーを受託者として自身の財産を預けることで、自身に疾病や認知症で判断能力がなくなっても、パートナーがスムーズに資産管理することができます。また、信託した財産については、自身の死後の承継先も決められるため、パートナーへの遺産承継も叶います。

任意後見で対策

任意後見は、将来の判断能力の低下に備えて、本人が自身の代理人(任意後見人)を指定し、その代理人と契約を事前に結ぶ仕組みです。これにより、将来的に判断能力が低下しても、任意後見人が本人の利益を尊重して医療のサポートを行うことができます。

注意しなくてはならない遺留分

遺留分とは、一定の法定相続人に最低限保証された相続分で、相続対策しても遺留分を排除することはできません。例えば事実婚カップルの一方が亡くなった際に、遺言書でパートナーに全財産を承継する文言を残しても、法定相続人から遺留分を請求されると、パートナーが承継できる資産が減ってしまいます。相続対策する際は遺留分への考慮が重要で、遺産の分配方法を工夫することや、生命保険で遺留分への備えを行うことが考えられます。

専門家に相談するメリット

相続対策に専門家を巻き込むことには多くのメリットがあります。専門家は高度な法的知識を有し、具体的な状況や希望に応じた最適な相続対策を提供できます。また、感情的なトピックに対する仲介役としても機能します。

まとめ

この記事では、事実婚カップルの相続対策の重要性に焦点を当てました。手続きを早めに進めることで、将来的なトラブルを未然に防ぐことができます。内縁の妻やパートナーへの遺産残しに関する課題や対策のポイントを理解することで、愛する人への手続きに着手する助けとなることを期待しています。分からない点や疑問が生じた場合は、いつでも専門家に相談することが大切です。お互いの未来に向けて、安心を築く一歩を踏み出しましょう。

木村 洋佑

この記事を書いた人

木村 洋佑 Kimura Yousuke

1984年、広島市生まれ。
2007年、駒澤大学法学部を卒業後、検察事務官として東京地方検察庁に入庁。
2012年、東京高等検察庁を最後に検察庁を退職し、2013年には司法書士の資格を取得。
2014年、資格研修終了後、広島市内の司法書士事務所に就職。
4年半の勤務を経て、
2018年7月、司法書士木村事務所を開設。

現在、広島市など広島県全域について、相続や遺言、信託に関するお困り事を中心に解決しています。

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