現代では家族の構成が多様化し、ある日突然、遠い親戚の相続人になることがあります。そのため、相続放棄を検討するケースが増えています。相続放棄には特定の手続きがあり、期限にも注意が必要です。本記事では、相続放棄の基本から注意点、専門家に依頼するメリットについて解説します。
相続放棄の基本
相続放棄とは、亡くなった方の財産や借金を受け継がないことです。通常、亡くなった方の財産や借金は相続人に引き継がれますが、相続放棄を選択することで、相続人はこれらの相続財産から解放されます。
単純承認と限定承認との違い
・単純承認:亡くなった方の不動産や金銭、借金など全ての財産を受け継ぐ方法です。
・限定承認:亡くなった方の借金等のマイナス財産が、預貯金等のプラス財産の価値を超える場合に、相続人がプラス財産の限度でマイナス財産を返済する方法です。亡くなった方の負債内容が不明な場合に選択されることがよくあります。相続人全員で行う必要があり、家庭裁判所への申立てが必要です。
ケーススタディ
相続放棄は、下記のような特定の状況下で選択されることが多いです。
・財産が負債で埋め尽くされている場合:故人の財産の大部分が借金やその他負債の場合、そのままでは相続人は多くの負債を引継ぐことになるため、相続放棄を選択することがあります。
・相続人が財産を受け継ぐ意志がない場合:財産に対する責任や管理が煩わしいと感じる場合や生前に故人と仲が良くなかった場合など、故人の財産を受け継ぎたくない場合に相続放棄を選択することがあります。
・財産が不動産や価値のないもので構成されている場合:相続財産が不動産や価値の低いもので構成されており、相続人が管理・維持したくない場合に、相続放棄が選択されることがあります。例えば、遠方にある価値の低い土地のみが相続財産の場合、相続すると維持費や管理の手間がかかることから相続放棄を検討される方がいます。
相続放棄の期限
相続放棄の期限は原則、故人が亡くなったことを知ってから3ヶ月以内に家庭裁判所に相続放棄の申出をする必要があります。なお、最初の相続人全員が相続放棄したことで、自身が相続人になった場合は、最初の相続人の相続放棄で自身が相続人になったことを知ってから3ヶ月以内です。
相続放棄できない場合
下記の場合は、相続放棄ができなくなってしまうため注意が必要です。
・期限を過ぎた場合
相続放棄の手続きには3ヶ月以内の期限があり、期限を過ぎた場合は基本的に相続放棄できなくなります。ただし、やむを得ない事情があり、その事情を家庭裁判所に認められれば相続放棄できるため、期限が過ぎてしまっても諦めずに専門家へご相談されるとよいでしょう。
・相続財産を処分、使用した場合
相続財産を売却したり、使用したりすると、相続放棄できなくなります。故人の相続財産の内容が不明の状況では、相続財産の取扱いに注意が必要です。
・遺産分割協議が締結された場合
相続人間で遺産分割協議を締結した場合は相続放棄が難しくなります。ただし、遺産分割協議で何も相続しなかった相続人が、後日多額の借金を知った場合は相続放棄できるケースがあります。
よくある質問
・相続人のうち1人が相続放棄したら、他の相続人の割合はどうなるの?
相続人の1人が相続放棄をした場合、放棄した相続人の相続分は、その他の相続人間で再分配されます。例えば、亡くなった方の相続人が3人の子供で、そのうちの1人が相続放棄をした場合に、残る2人の子供が2分の1ずつ相続することになります。
・相続人全員が相続放棄したら、相続財産はどうなるの?
相続人全員が相続放棄した場合、次の順位の相続人に権利が移ります。そして、次の相続人も相続放棄したことで相続人が存在しない場合は、一定の手続きを経て国に帰属します。
・生命保険金を受け取っても、相続放棄はできるの?
生命保険金は相続財産ではないため、相続放棄をすることができます。ただし、入院給付金や満期保険金等、亡くなった方が保険受取人になっているものは相続財産に該当するため、受け取ってしまうと単純承認とみなされ相続放棄できなくなります。
相続放棄を専門家に依頼するメリット
相続放棄の手続きは複雑で期限や注意点など気を付けることが多々あります。司法書士や弁護士などの専門家は法的知識や経験から、正確で迅速に手続きを行うことができます。また、相続放棄は感情的な選択を伴うことが多いため、専門家は第三者の立場で客観的にアドバイスすることができます。
まとめ
現代のさまざまな家族構成において、予期せず相続人となることも考えられます。相続放棄は、亡くなった方の財産や借金を受け継がない決断で、その手続きには期限や細心の注意が求められます。特に不動産や多額の負債が関わる場合、より複雑になることがあります。トラブルを避けるためにも、温かくサポートしてくれる専門家への相談をおすすめします。