「遺言執行者の役割と重要性:遺言書の書き方のポイント」

相続コラム

2023.01.03

遺言書の作成において、遺言執行者の存在と役割の正しい理解は極めて重要です。本記事では、遺言執行者の選定、報酬、書き方についてのポイントを説明します。遺言書作成の際に、このポイントをしっかり押さえておきましょう。

遺言執行者とは

遺言執行者は、遺言者が亡くなった後に遺産の分配や遺言の実行を担当する人です。遺言執行者は預金の解約等を単独で行うことができるため、相続人の負担を軽減してスムーズな承継を可能にします。

遺言執行者の選定

遺言執行者に資格は必要ありませんが、相続開始時に未成年者と破産者はなれません。信頼できる相続人や友人から選ぶことも可能ですが、専門的な知識や経験が必要な場合もあるため、司法書士や弁護士等の専門家を選ぶことも選択肢の一つです。

専門家を選ぶメリット

専門家を遺言執行者として選ぶことは以下のメリットがあります。

・法的知識:専門家は、相続に関する法律や手続きに精通していますので、効率的かつ適切に手続きを進めることができます

・中立的な立場:専門家は遺言者の意志を尊重しながら、遺産の分配や関連する問題を中立的な立場で取扱うことができるため、相続人間の紛争を防ぐ上で有効です

・時間の節約:専門家は知識や経験により、効率的に作業を進めることができます

※遺言執行者を選ぶ際は、遺言者の意向や財産、法的問題を考慮することが重要です。専門家を選ぶことは、多くのメリットや安心感が期待できます。遺言書を作成する過程で早めに専門家と連携すると、手続きがより円滑に進行します。

遺言執行者を定める方法

遺言書で遺言執行者を定める方法は以下の通りです。

・具体的な遺言執行者が決まっている場合:遺言執行者の氏名、住所、生年月日、職業、および遺言執行者に定める旨を遺言書に記載します。遺言執行者には事前に承諾を得ておきましょう。

・具体的な遺言執行者が遺言書作成時に決まっていない場合:相続が発生した後に相続人が遺言執行者を選ぶことができます。この場合、遺言執行者を選ぶことができる人の氏名、住所、生年月日、および遺言執行者を選ぶ権限があることを遺言書に記載します。

よくある質問

*遺言執行者を定めなかった場合、デメリットはありますか?

次のようなデメリットが考えられます。

・まとめ役の不在:相続人が多い場合などで手続きについて指示する人がいないと混乱が生じ、適切な処理が遅れる可能性があります

・手続きの遅延:相続人自身が預金や株の解約手続きを行う場合、全員の同意が必要になることが多く、時間を要することがあります

・戸籍取得の難しさ:相続人が多い場合や戸籍が複雑な場合に、適切な手続きが遅れたり誤りが生じる可能性があります

・遺言書の未発見:遺言執行者が指定されていないと、遺言書の存在を知っている者が限られ、結果として遺言書が見過ごされるリスクが高まります

・家族間の紛争のリスク:遺言執行者が不在の場合、遺産に関する意見の対立や紛争が生じやすくなります

・不適切な管理:遺産の管理や保護の観点から、遺言執行者が不在だと遺産が不適切に取り扱われるリスクが高まります

*遺言執行者を数人選ぶことはできますか?

遺言執行者を数人選ぶことは可能です。遺言執行の際に意見が分かれた場合は、過半数の同意で決定します(遺言書で別段の定め可能)。遺言執行者が偶数の場合や意見の不一致が予想される場合は、それぞれの役割を遺言書に明記しておくとよいでしょう。

*遺言執行者への報酬はどのように決めるのですか?

遺言執行者への報酬は、遺言書で具体的な金額や割合を明記することができます。もし遺言書に報酬の規定がない場合、相続人全員との合意や裁判所の判断で決まるため、時間を要する可能性があります。事前に遺言書で報酬について記載しておく方がスムーズです。なお、遺言執行者への報酬や必要経費は、遺産から支払われることが法律で規定されています。

*遺言執行者になって欲しい人がいるが、先に亡くなってしまう可能性があります。

予備の遺言執行者を指定することができます。相続が発生した際に、指定した遺言執行者が辞退したり、亡くなっていたりする場合を考慮して、予備の遺言執行者を遺言書で定めておくことができます。

*実際に相続が発生したら、遺言執行者は何をするのですか?

遺言執行者の主な仕事は以下の通りです。

・検認:自筆証書遺言書を保管していた場合は家庭裁判所へ検認申立てを行います

・相続人の特定:関係戸籍を確認し、相続人を確定します

・通知:法定相続人等に、遺言執行者に就任した旨や遺言書の内容を通知します

・目録作成:遺産目録を作成して、相続人に通知します

・遺産の分配:遺言書に基づき、預金や株の解約等を行い、相続人に分配します

・完了の通知:相続人に対して、業務が完了したことを報告します

まとめ

遺言執行者は、遺言書作成時に重要な要素であり、正しい理解が必要です。遺言執行者は遺言者の遺志を実行し、遺産の管理や分配を担当する重要な存在です。遺言書を作成する際に、遺言執行者について考慮し、円満な承継を実現しましょう。

木村 洋佑

この記事を書いた人

木村 洋佑 Kimura Yousuke

1984年、広島市生まれ。
2007年、駒澤大学法学部を卒業後、検察事務官として東京地方検察庁に入庁。
2012年、東京高等検察庁を最後に検察庁を退職し、2013年には司法書士の資格を取得。
2014年、資格研修終了後、広島市内の司法書士事務所に就職。
4年半の勤務を経て、
2018年7月、司法書士木村事務所を開設。

現在、広島市など広島県全域について、相続や遺言、信託に関するお困り事を中心に解決しています。

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