法定相続情報証明制度:相続手続きをスムーズに進めるための便利な制度

相続コラム

2023.01.20

相続が発生すると多くの場合、複雑な手続きが必要となります。この手続きを容易にするための重要なツールが「法定相続情報一覧図」です。この記事では、法定相続情報証明制度の概要、利用方法、および注意点について詳しく解説します。

法定相続情報証明制度の特徴とメリット

この制度は平成29年から始まり、相続に関する手続きを簡素化し、効率的に進めることを目的として導入されました。主な特徴は以下の通りです。

・法定相続情報一覧図の作成:相続人が作成した法定相続情報一覧図と戸籍一式等を法務局に提出することで、法務局から認証文付きの「法定相続情報一覧図」が交付されます。これには、亡くなった方の氏名、住所、本籍、生年月日、死亡日と相続人の氏名、住所、生年月日、続柄が記載されています。

・相続手続きの効率化:法定相続情報一覧図の利用により、銀行口座の解約や不動産の名義変更などの各種相続手続きがスムーズに行えるようになります。以前は、故人の出生から死亡までの戸籍や相続人の戸籍、住民票がそれぞれの相続手続きに必要でした。特に、故人が多くの銀行口座を持っていた場合、各金融機関ごとに戸籍を収集する必要があり、手数料が高額になることや、一つの金融機関での手続きが完了するまで他の機関の手続きを開始できないこともあり、相続人にとって大きな負担でした。しかし、法定相続情報一覧図を用いることで、戸籍を提出する必要がなくなり、相続に関連する手続きをより迅速に進めることが可能になります。

法定相続情報証明制度のデメリット

この制度に大きなデメリットはほとんどありませんが、制度を利用するためにはいくつかの書類を準備する必要があり、時間と手間がかかることがあります。また、遺産が不動産だけであったり、金融機関の口座が少なかったりする場合、この制度を利用する必要がない場合もあります。

法定相続情報証明制度の利用方法

法定相続情報証明制度を利用するには、下記のステップで進めます。

①必要書類の取得

下記の書類を準備する必要があります。

・亡くなった方の出生~死亡までの戸籍

・亡くなった方の最後の住民票または戸籍附票

・相続人の戸籍

・相続人の住民票または戸籍附票(任意ですが、②のステップで法定相続情報一覧図に住所を反映させておけば、相続手続きの際に別途住民票の提出が不要になります)

・申立てをする人の身分証明書など

②法定相続情報一覧図の作成

収集した戸籍や住民票をもとに、パソコンなどで法定相続情報一覧図を作成します。記載方法は法務局のホームページなどで確認しましょう。

③申立書の作成

所定の申立書に必要事項を記載します。この時、手続き完了後の法定相続情報一覧図(認証文付き)の必要部数を記載します。手続きが完了した後も5年間は再交付が可能ですが、法務局の窓口または郵送で請求手続きが必要になるため、多めに請求しておくことをお勧めします。

④法務局へ提出

上記の書類が揃ったら、下記いずれかを管轄する法務局へ窓口又は郵送で書類を提出します。

 (1)被相続人の本籍地(死亡時の本籍)

 (2)被相続人の最後の住所地

 (3)申出人の住所地

 (4)被相続人名義の不動産の所在地

⑤手続きの完了

提出から約2週間で手続きが完了し、法務局より認証文付きの法定相続情報一覧図が発行されます。認証文付きの法定相続情報一覧図は、金融機関や相続登記等の手続きに使用することができます。

法定相続情報証明制度の注意点

・正確な書類収集

亡くなった方の出生から死亡までの戸籍を正確に集める必要があります。稀に昔の戸籍には記載内容に誤りがあり、事前に修正が必要な場合があります。

・外国籍の人がいる

相続人や被相続人に外国籍の人がいる場合、戸籍を添付できないため法定相続情報証明制度を利用することができません。

・金融機関の方針

多くの金融機関で、法務局の認証文付き法定相続情報一覧図があれば戸籍の提出を省略できますが、金融機関によっては戸籍や追加書類が必要なこともありますので、事前確認が必要です。

司法書士による法定相続情報一覧図の作成のメリット

法定相続情報証明制度を含む相続手続きは、時間と労力がかかります。司法書士に依頼することで、手続きをより正確かつ効率的に進めることができます。また、不動産の相続登記や預金の解約手続きなど、相続に関連する様々な手続きを円滑にサポートすることもできます。さらに、法定相続情報証明制度は相続登記を法務局に申請する際にも利用でき、一連の手続きを一度に行うことが可能です。

さいごに

法定相続情報証明制度は、相続手続きを効率的かつ正確に進めるための非常に役立つ手段です。しかし、その作成と利用には特定の知識と注意が必要です。特に、亡くなった方が何度も転籍している場合や、相続人が複数いる場合、司法書士など専門家のサポートを受けることでより早く正確な手続きが実現します。ぜひ法定相続情報証明制度を利用して、スムーズな承継を叶えましょう。

木村 洋佑

この記事を書いた人

木村 洋佑 Kimura Yousuke

1984年、広島市生まれ。
2007年、駒澤大学法学部を卒業後、検察事務官として東京地方検察庁に入庁。
2012年、東京高等検察庁を最後に検察庁を退職し、2013年には司法書士の資格を取得。
2014年、資格研修終了後、広島市内の司法書士事務所に就職。
4年半の勤務を経て、
2018年7月、司法書士木村事務所を開設。

現在、広島市など広島県全域について、相続や遺言、信託に関するお困り事を中心に解決しています。

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