遺言書は、遺産承継をスムーズに進めるための重要な文書です。特に、自筆証書遺言は手軽に作成できる方法の一つですが、相続開始後の検認手続きが必要です。この記事では、検認手続きの重要性、具体的な方法および注意点について詳しく解説します。
検認手続きの目的と重要性
自筆証書遺言の場合、遺言書を作成した人が亡くなった後、検認という家庭裁判所の手続きが必要とされます。その理由として、以下の通りです。
・相続登記や承継手続きに必要:検認手続きを経て家庭裁判所から発行される「検認済証明書」は、不動産の相続登記や預金解約などの承継手続きに不可欠です。この証明書がなければ、遺産の処理が滞ってしまいます。
・遺言書の存在の確定:検認手続きの主な目的は、相続人に遺言書の存在と内容を知らせ、遺言書の状態や形状を確定させることです。これにより、検認手続き以降の遺言書の改ざんや偽造を防止します。
なお、法務局の保管サービスを利用した自筆証書遺言や公正証書遺言については、検認手続きが不要です。
検認手続きの具体的な方法
検認手続きの具体的な方法と流れについて、以下に詳しく説明します。
1)家庭裁判所への申立て:遺言書を保管していた人や遺言書を発見した相続人は、家庭裁判所に必要書類を提出し、検認手続きを申し立てる必要があります。この際、以下のポイントに留意しましょう。
・検認申立先:亡くなった方の最後の住所地がある家庭裁判所に、持参または郵送で必要書類を提出します
・必要書類:所定の申立書に加えて、遺言書の写し(封筒がない場合や、開封されている場合)、亡くなった方の出生~死亡までの戸籍、相続人全員の現在の戸籍が必要です
・期限:遅滞なく申立てることが必要です
・手数料:遺言書1部につき800円と、切手(相続人への通知等に使用)が必要です
2)家庭裁判所から相続人へ通知
検認申立てを受けた家庭裁判所は、亡くなった方の全ての相続人に通知書を送ります。通知書には遺言書の存在、検認手続きを行う日時、出席の希望が含まれます。
3)検認の当日
相続人に対して、遺言書の存在とその内容を知らせます。また、出席した相続人がいる場合、筆跡などについて意見を交換することがあります。
4)検認済証明書の発行
検認手続きが完了すると、家庭裁判所から検認済証明書が添付された遺言書が返却されます。これにより、相続登記や預金解約などの承継手続きが行えます。
検認手続きにおける注意事項
検認手続きにおいて注意すべきポイントについて以下で解説します。
Q遺言書を封筒に入れて保管していた場合、どのように注意すべき?
A自筆証書遺言が封筒に入っている場合に、検認手続きを経ずに開封してしまうと、行政処分として5万円以下の過料が科されることがあります。封筒に入っている遺言書を見つけた場合は、検認手続きまでは開封しないようにしましょう。
Qすべての遺言書において検認手続きは必要?
A公正証書遺言や、法務局の保管サービスを利用している自筆証書遺言の場合は、検認手続きが不要です。
Q検認手続きを行っても、遺言書が有効ではないと判断されることがある?
A検認手続きは形式的な審査のみであり、遺言書の内容が有効かどうかを判断するものではありません。そのため、検認手続きを経ても、関係相続人から遺言書の有効性を争われる可能性があります。遺言書の有効性を確保するためには、遺言書作成段階で司法書士や弁護士等の専門家のサポートを受けることが重要です。専門家は個々の状況や法的問題から公正証書遺言か自筆証書遺言の選択や作成におけるアドバイスを行うことができます。
Q自分で検認手続きできる?
A検認手続きはご自身で家庭裁判所に申し立てることができます。しかし、必要書類が多く、専門知識が必要な場合もあるため、司法書士や弁護士などのサポートがあるとスムーズです。
Q検認手続きの際、相続人の出席は必須?
A検認を申し立てた人は出席する義務がありますが、他の相続人は出席する義務はありません。欠席しても特に不利益なことはありませんが、遺言書の内容を早めに知りたい方は出席したほうがよいでしょう。
Q検認手続きしないとどうなる?
A検認を経ずに遺言書の内容を実行した場合は、5万円以下の過料が科される可能性があります。また、不動産登記や銀行預金の解約には、検認手続き後に発行される検認済証明書が必要なため、承継手続きもできなくなってしまいます。
まとめ
遺言書は、大切な遺産のスムーズな承継の手助けとなります。特に自筆証書遺言の場合、「検認手続き」が欠かせません。これは、大切な遺言の信頼性を守るためのものです。ただ、手続きは少し複雑かもしれませんので、司法書士や弁護士などの専門家のアドバイスを受けることをおすすめします。遺産を大切に、遺言書と検認手続きに関する正しい知識とサポートを求めてみましょう。