自筆証書遺言の法務局保管制度に迫る:仕組みとポイント

相続コラム

2023.01.19

はじめに

遺言は大切な財産や意思を後世に伝える手段として、多くの方が検討されています。本記事では、その中でも費用がかからず、簡単に作成できる「自筆証書遺言」に焦点を当て、法務局での保管制度について深堀していきます。遺言作成に迷っている方や、保管に関する疑問をお持ちの方はぜひご参照ください。

自筆証書遺言とは?

自筆証書遺言は、遺言者自身が手書きで作成したものです。よく比較される公正証書遺言は、公証人に数万円の手数料を支払って遺言を作成してもらい、公証役場で遺言は保管されます。自筆証書遺言は費用がかからず、ご自身のタイミングで簡単に作成できる一方で、誰の関与もなく作成できるため遺言書を実現するためには法的要件を満たすことが重要です。

法務局での保管とは?

法務局保管のメリット

ご自身で作成した自筆証書遺言を管轄の法務局(遺言書保管所)で保管できる制度があります。法務局の保管により、紛失や破損の心配がなく、遺言を確実に守ることができます。また、自筆証書遺言は亡くなった後に検認という家庭裁判所の手続きを経ないと承継手続きができませんが、保管制度を利用した自筆証書遺言は検認が不要なため、相続人の負担を減らすことができます。

保管手続きのステップ

具体的な法務局の保管手続きについて、ステップごとに詳細に解説します。

1)遺言書の作成

自筆証書遺言を作成します。手書きで記入し、日付を明確に入れ、遺言者自身が署名することが必要です。内容は具体的で明確であるほど良いです。

2)法務局の選定

遺言書保管所をどこにするか選択しましょう。手続きには出向く必要があるため、アクセスが良いといいでしょう。

・遺言者の住所地

・遺言者の本籍地

・遺言者の所有する不動産の所在地

3)予約

専用サイトやお電話にて、来庁する日時を予約しましょう。

4)管轄の法務局へ持ち込み

予約日に必要書類を持ち込みます。一般的に下記の持ち物が必要です。

・所定の保管申請書

・遺言書(ホチキス止めや封筒は不要)

・住民票(本籍や筆頭者が記載されたもの)

・顔写真付きの身分証明書

・手数料3,900円/通

5)保管証の発行

上記の手続きが完了すると「保管証」が発行されます。この証明書には保管番号が記載されており、将来的な閲覧や撤回、変更などの手続きの際に、保管番号が分かると手続きがスムーズです。

注意点とQ&A注意点

・内容の明確さと正確さ

法務局に提出した自筆証書遺言は、形式的に法律に定める方法で作成されたか確認してもらえます。しかし、内容が法的に有効かどうかの判断まではしてもらえません。法的に有効か心配だったり、相続人間の紛争の可能性があったりする場合は、公正証書遺言にすることや司法書士など専門家のアドバイスを受けながら自筆証書遺言を作成する方法もあります。

 ・遺言の撤回手続き

法務局で保管された遺言を撤回する場合も所定の手続きが必要です。なお、遺言の内容を一部変更したい場合、該当部分についてのみ修正文を作成する方法もありますが、分かりにくくなることや、他の遺言内容と矛盾が生じることもあるため、新たな遺言で従前の遺言の撤回をし、新たに全て書き直すことをお勧めしております。

・変更の手続き

下記の場合には、遺言書を預かっている法務局へ変更を届け出る必要があります。手続きを行わないと、遺言者が亡くなった後の通知が滞ってしまうこともあります。

 ・遺言者の氏名、住所、本籍や筆頭者の変更

 ・受遺者や遺言執行者の氏名、住所の変更

Q遺言書を法務局で保管するデメリットはありますか?

この制度には下記のデメリットがあります。

・行く必要がある

遺言者本人が法務局へ出向いて手続きする必要があります。体が不自由で来庁できない場合は利用できないため、公証人が自宅等へ出張できる公正証書遺言を選択してもいいでしょう。

・法務局での確認は形式的なもの

法務局に自筆証書遺言を提出すると、外形的に間違いがないか確認してもらえます。一方、遺言内容が法的に有効なものかどうか確認されません。遺言の内容を確実に実行したい、相続人の紛争可能性を低くしたいのであれば、司法書士など専門家に遺言書を事前に確認してもらう方法や公正証書遺言にする方法もあります。

Q自筆証書遺言を法務局に預けたら、家族に伝えた方がいいですか?

はい、遺言をより確実に実現するためには家族や遺言執行者に遺言を保管したことを伝えておく方がよいでしょう。なお、遺言者が生前に希望すれば、亡くなった後に指定した人に遺言書を保管していることが通知されます。

Q生前に保管した遺言書の内容を確認することはできますか?

遺言者本人のみ保管した遺言の閲覧を請求することができます。それ以外の人は、本人の生前に閲覧できません。

Q実際に遺言者が亡くなった後、法務局に遺言が保管されているか確認できますか?

はい、全国の遺言書保管所に所定の書類を提出することで、自身が相続人や遺言執行者等とする遺言書が保管されているか確認することができます。

さいごに

自筆証書遺言を法務局で保管することは、遺言者とその家族にとって大きな利益をもたらす可能性があります。本記事が読者の遺言に関する疑問や不安を解消し、安心して法務局の保管制度を利用できる手助けとなれば幸いです。遺言は将来への備えであり、その管理に関する知識が重要です。

木村 洋佑

この記事を書いた人

木村 洋佑 Kimura Yousuke

1984年、広島市生まれ。
2007年、駒澤大学法学部を卒業後、検察事務官として東京地方検察庁に入庁。
2012年、東京高等検察庁を最後に検察庁を退職し、2013年には司法書士の資格を取得。
2014年、資格研修終了後、広島市内の司法書士事務所に就職。
4年半の勤務を経て、
2018年7月、司法書士木村事務所を開設。

現在、広島市など広島県全域について、相続や遺言、信託に関するお困り事を中心に解決しています。

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