親の遺産を相続することは、家族にとって極めて重要な出来事です。本記事では、遺産分割において選択肢となる現物分割、代償分割、換価分割の３つの分割方法に焦点を当て、特に不動産の分割においてそれぞれのメリットとデメリットを詳しく探ります。

相続の背景と不動産の重要性

親が亡くなり遺産に不動産があると、遺言書で承継先の指定がなければ、相続人全員の遺産分割協議で承継先を決定します。不動産を１人または複数で相続するか、１人で不動産を相続する代わりに他の相続人に金銭で代償するか、空き家になるから不動産を売却してしまうか等どのように分割するか問題になります。

不動産の現物分割

現物分割は遺産である不動産や株式などを形を変えずに分割する方法をいい、一番分かりやすい分割です。

適用ケース

・特定の人が不動産を相続することについて、相続人全員が納得している場合

・不動産以外にも遺産が多くあり、不動産を相続しない人には他の遺産を分割することで公平になるように調整できる場合

・例えば、二世帯の不動産は同居の長男に分割して、次男には多めに預貯金を分割する場合

メリット

・代償分割や換価分割のような資産の評価の計算が不要

・誰が承継したかすぐに明らかになる

デメリット

・不動産の価値によっては、相続人間で不公平が生じる場合がある

・土地を分筆して公平に分ける場合、分筆により土地の価値が下がる場合がある

不動産の代償分割

代償分割は一部の相続人が不動産を相続する代わりに、他の相続人に対して不動産の価値に応じた金銭を支払うことで公平な分割をする方法です。

適用ケース

・二世帯住宅や経営する会社の株式など分割が難しい遺産がある場合

メリット

・特定の財産や権利の価値に基づいて金銭を支払うことで、均等な分割が難しい状況でも公平性を維持できる

・遺産分割協議の際に金銭による代償は合意が得られやすく、相続人間の対立を減少することができる

デメリット

・不動産や事業などは正確な評価が難しい場合があり、評価の不一致により相続人間のトラブルが発生する可能性がある

・代償を支払う相続人が十分な金銭を用意できない場合、他の相続人に代償を支払えない可能性がある

不動産の換価分割

遺産の不動産をそのまま相続せず、売却して換金された金銭を相続人で分割する方法です。

適用ケース

・不動産をそのまま相続したい人がいない場合

・遺産の大部分が不動産であり相続税の支払いが難しく、不動産を売却した金銭で相続税の支払いをしたい場合

メリット

・分けにくい財産でも公平な分割が可能

・代償分割と異なり相続人が金銭を用意する必要がない

デメリット

・不動産を売却するための時間と手間がかかる

・相続人の同意がないと手続きを進められないため、希望のタイミングで売却できないことがある

・不動産に居住している親族等がいる場合、不動産売却により住まいを失うことになる

換価分割と相続登記

親が亡くなったことで不動産が空き家になる場合や、物理的に遠方にある不動産は、換価分割の方法が選択されることがよくあります。ここでは相続登記の注意点について説明します。

・相続登記が必要：亡くなった方の名義のままでは買主に売却できないため、あらかじめ相続登記が必要です。相続登記は下記いずれかの方法で行います。

（１）相続人全員に相続登記

遺産分割で相続することになった割合に応じて、相続人へ相続登記を行います。その相続人全員が売主となり、売買契約や登記手続きを行う方法です。相続する人全員が必要な手続きに関与しなくてはならないため、相続人が多かったり、足腰の悪い高齢者がいたりする場合、売却までに時間がかかる可能性があります。

（２）代表者に相続登記

相続人のうち代表者１名に相続登記を行い、その代表者が売買契約や登記手続きを行い、売買代金を他の相続人と分ける方法です。代表者だけで手続きを済ませることができるため、手続きがスムーズになるメリットがあります。ただし、遺産分割協議書の記載を誤ると贈与とみなされてしまったり、相続登記の際に法務局の指摘を受けたりすることもあるため、司法書士や税理士のサポートを受けた方がよいでしょう。

専門家のアドバイスを受けるメリット

遺産分割における現物分割、換価分割、代償分割には、専門家のアドバイスを受けることが重要です。特に代償分割や換価分割においては、遺産の評価の計算や遺産分割協議書への特別な記載が必要です。司法書士、税理士など専門家のサポートを得ることで、登記手続きや税務申告におけるトラブルを最小限に抑えましょう。

さいごに

不動産相続において、現物分割、代償分割、換価分割の選択は慎重を要します。家族の合意と協力が大切であり、専門家のアドバイスはトラブル防止に役立ちます。それぞれの分割方法のメリットとデメリットを理解し、相続登記の方法も検討しましょう。家族全体の協力と専門家のサポートを得ながら、円滑な遺産分割を進めましょう。