「二世帯住宅の所有者必見:相続におけるリスクと対策法」

相続コラム

2023.01.08

住まいは大切な財産であり、家族と共有する特別な場所です。特に、二世帯住宅に住んでいる家族は、将来を見越して相続について考える必要があります。この記事では、二世帯住宅の相続のリスクと対策について、詳しく解説します。

二世帯住宅の相続におけるリスク

二世帯住宅の場合に同居の親が、土地や建物の所有権を一部ないし全部持っていることが一般的です。親が亡くなると、その所有権はどのように扱われるのでしょうか。親が相続対策を何もしないで亡くなった場合、親の不動産の承継先を決めるために相続人全員で遺産分割協議が行われます。しかし、相続人間で意見の対立があると、以下のことが生じる可能性があります。

親の持分をもらう代わりに、金銭で補償

遺産分割協議の際に、親の共有不動産を同居の子に相続させる代わりに、他の相続人から同居の子に対して金銭で補償するように求められることがあります。特に親の遺産の大部分が二世帯の土地で資産価値がある場合、不動産を均等に分割することが難しいためにこの方法になることがあります。同居の子が資金に余裕のない場合は、不動産を相続人で分割したり、売却したりする必要が出てくることも考えられます。

複数の相続人で共有する

遺産分割協議の際に、親の不動産を複数の相続人で共有することも考えられます。複数人で不動産を共有にすると、建物の修繕や解体、不動産の売却、リフォームに伴う借入れが必要になると、相続人全員の同意が必要な場合もあり、意見がまとまらない可能性があります。また、相続人にさらなる相続が生じた場合、二世帯住宅の所有者が増えることあるため、権利関係が複雑になります。

二世帯住宅の分割や売却

遺産分割協議の際に話がまとまらないと、二世帯住宅の土地や建物の一部を切り離したり、売却して金銭を分け合ったりする方法になる事があります。そうなると、二世帯住宅に住む親族は、住み慣れた家がなくなってしまいます。また、不動産を物理的に分けた場合は、それに伴う工事費用や法的手続きが発生しますし、売却することになった場合は、売却時の価格や売却プロセスについて合意が必要であり、意見の対立が起こる可能性があります。

相続トラブルにおけるストレス

遺産分割でトラブルが生じた場合に、自分たちで解決できないと裁判所の関与が必要なことがあります。調停や裁判は、相続人にとって精神的にも金銭的にも負担が大きいです。

相続対策

遺言書の作成

遺言書は財産の承継先について希望を残すことができる重要な文書です。遺言書で二世帯住宅の承継先を定めておくことで、相続発生後に遺産分割協議を行う必要がなくなり、スムーズな承継が可能です。

生前贈与

生前に同居の子に、親の不動産を贈与しておく方法です。これにより親が亡くなった後に二世帯住宅の承継先をどうするか揉めるリスクをなくせます。ただし、生前贈与は贈与税がかかることもあるので注意が必要です。

家族信託

家族信託とは信託契約書に基づいて、本人の財産を信頼できる人(受託者)に託し、受託者が本人に代わって管理・運用します。二世帯住宅の場合、親の不動産持分を受託者(例えば同居の子ども)に家族信託することで、親に認知症や疾病が生じても、受託者がスムーズに管理することができます。また、親が亡くなった後の承継方法について定めることもできるため、相続発生時の紛争を回避することができます。

専門家にアドバイスを求めるメリット

相続問題は複雑で、特に二世帯住宅の相続は難しいことがあります。専門家である司法書士や弁護士は、専門知識や経験を活かし、遺言書、生前贈与、家族信託などの法的対策で、個々の状況に合わせた最適な相続プランを立てることができます。また、実際に相続が発生した後の手続きもサポートできるため、スムーズな承継が叶います。

共有不動産との上手な付き合い方

二世帯不動産について親の相続が発生し、遺産分割協議の結果、他の相続人と共有になってしまった場合は、下記の方法で将来的なトラブルを避けることができます。

共有不動産の解消へ向けて

複数の相続人で共有している不動産は、分筆手続きを行ったり、共有者間で建物の売却や贈与をしたりして共有状態を解消することが考えられます。これにより、共有不動産特有のリスクを回避することができます。

家族間の取り決めを文書に

二世帯住宅の日常の維持費や将来のリフォーム計画、売却の際の方針など、具体的な取り決めを文書化して保存しておくと、後の不必要なトラブルを避ける手助けとなります。

専門家への相談

司法書士、弁護士、税理士などの専門家は、共有不動産における解決に向けた最適なプラン設計と法的手続きのサポートができます。

まとめ

二世帯住宅の相続は複雑な問題を抱えていますが、適切な対策をしておくことで家族内の対立を避け、円滑な相続手続きを進めることができます。大切な家族の資産と平和を守るために、今からしっかりと計画を立てていきましょう。

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木村 洋佑

この記事を書いた人

木村 洋佑 Kimura Yousuke

1984年、広島市生まれ。
2007年、駒澤大学法学部を卒業後、検察事務官として東京地方検察庁に入庁。
2012年、東京高等検察庁を最後に検察庁を退職し、2013年には司法書士の資格を取得。
2014年、資格研修終了後、広島市内の司法書士事務所に就職。
4年半の勤務を経て、
2018年7月、司法書士木村事務所を開設。

現在、広島市など広島県全域について、相続や遺言、信託に関するお困り事を中心に解決しています。

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