「前編:家族の逝去に伴う手続き~死亡届から役所の届出までの初動ステップ~」

相続コラム

2023.01.10

家族が亡くなると、辛い思いと共に、様々な手続きや不安が押し寄せます。手続きはいくつかの段階に分かれており、それぞれ慎重な対応が必要です。これらのステップを正確に進め、期限を守ることは、遺族と遺産を保護する上で非常に重要です。前編では、死亡届の提出から葬儀の準備、役場での手続きまで、基本的な流れを解説します。

1.死亡届の提出と関連手続き:7日以内

死亡届は、亡くなった人の死亡を法的に確認する手続きであり、その後の手続きの基盤となります。死亡届とともに火葬許可申請書の提出が必要です。

・提出先:故人が亡くなった場所、本籍地、届出人の住所地のいずれかの役場

・提出者:家族等

・期限:亡くなった事を知ってから7日以内

※葬儀社が代理で提出してくれることが多いため、葬儀社に相談するとよいでしょう

2.葬儀と納骨:速やかに

葬儀や納骨は故人の意志を尊重しながら進める重要な段階です。以下に基本的な流れとポイントを簡単に説明します。

  • ご遺体の搬送:病院で亡くなった場合、葬儀社に依頼して自宅などへ搬送が必要です。搬送のみ葬儀社に依頼することもできるため、葬儀を行う葬儀社は後から決めることもできます。
  • 葬儀の計画:通夜、告別式、葬儀について葬儀社と打合せをします。また、葬儀のスタイル、場所、日時などを家族と相談して決めます。生前に本人から希望を聞いていた場合や、遺言書に希望があった場合は、本人の意思を尊重できるとよいでしょう。最近は、参列者を家族や親しい人に限定する家族葬により、故人との別れの時間をゆっくりとる方が増えているようです。
  • 通夜・葬儀・火葬:遺族や友人によって、故人を送り出します。
  • 納骨:遺骨は納骨堂や墓地に収められ、永遠の安息の場所に置かれます。一般的には四十九日の法要に合わせて納骨しますが、タイミングは宗教や個人によって様々です。葬儀社やお寺、霊園に相談するとよいでしょう。

なお、葬儀や納骨にかかる費用を誰が負担すべきかについて、法律で明確に決まっているわけではありません。相続人全員で負担すること、喪主が負担すること、遺産から払うことなど様々な見解があります。後の相続トラブルを防ぐためには、相続人の話し合いの上、葬儀の内容や費用について事前に合意しておくとよいでしょう。

3.健康保険の手続き:14日以内(5日以内)

健康保険の手続きも忘れずに行いましょう。

・故人が後期高齢者医療保険や国民健康保険に加入していた場合

亡くなった日から14日以内に資格喪失届と保険証の返却手続きを行う必要があります。故人の住所地の役場に提出を行いましょう。この時に、扶養者の関係手続きも必要になります。事前に必要書類や手続きについて、役所のHPや電話で確認しておくとスムーズです。なお、役所によっては死亡届を提出したことで、資格喪失手続きが不要な場合もあります。

・故人が会社員で健康保険に加入していた場合

会社側で亡くなってから5日以内に関係手続きを行うことが一般的です。速やかに勤務先に連絡しましょう。

4.葬祭費の申請:2年以内に

亡くなった方の加入していた健康保険により、葬儀費(埋葬料)が支給されます。

・故人が後期高齢者医療保険や国民健康保険に加入していた場合

故人の住所地の市区町村に申請することで、一般的に3~5万円程度の葬祭料が支給されます。葬儀の翌日から2年以内の申請ですが、忘れないうちに手続きしましょう。

・故人が会社員で健康保険に加入していた場合

一律5万円の支給があります。会社から健康組合等に申請を行うことが多いため、勤務先に確認しましょう。

5.公的年金の手続き:速やかに

年金を受けている人が亡くなると、受給停止の届出が必要です。手続きが遅れてしまい、余分な年金が支払われてしまった場合、過払いの返金手続きが必要です。一方で、亡くなるまでの未払い年金がある場合は請求することができます。

なお、国民年金や厚生年金の被保険者が亡くなった場合、その遺族(配偶者や子供など)の経済的負担を軽減するために遺族年金の制度があります。手続き方法や受給要件は個々のケースで異なりますので、最寄りの年金事務所か街角の年金相談センターに確認しましょう。

6.各種支払いの停止:速やかに

亡くなった方が生前に支払っていた光熱費、クレジットカード、保険料、ローンの返済等の支払いを停止するため、各窓口に連絡する必要があります。これにより、不要な支出を抑えることができます。

前編: まとめ

大切な家族が亡くなると、感情的な苦しみや法的な複雑さが生じますが、迅速で正確な初動が遺族と遺産の保護に不可欠です。前編では、死亡届の提出、葬儀の計画、健康保険の手続き、葬祭費の申請について説明しました。これらのステップを適切に進めることが次に行う遺産承継や税務申告においても重要です。後編では、遺産の承継や税務申告の手続きの流れに焦点を当てて説明します。

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木村 洋佑

この記事を書いた人

木村 洋佑 Kimura Yousuke

1984年、広島市生まれ。
2007年、駒澤大学法学部を卒業後、検察事務官として東京地方検察庁に入庁。
2012年、東京高等検察庁を最後に検察庁を退職し、2013年には司法書士の資格を取得。
2014年、資格研修終了後、広島市内の司法書士事務所に就職。
4年半の勤務を経て、
2018年7月、司法書士木村事務所を開設。

現在、広島市など広島県全域について、相続や遺言、信託に関するお困り事を中心に解決しています。

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