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相続コラム
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相続手続は、なぜ早めにするべきか。専門家である司法書士が解説
相続コラム
2023.09.25
1.はじめに
相続手続は、お早めに。
こんなことを聞いたことはございませんか。
これには、キチンとした理由があるのです。
今般は、この理由の一つについて、深掘りしながらお話していきたいと思います。
昨今、長寿を迎える人が増加している中で、遺産相続の問題はますます複雑化しています。
特に、認知症の配偶者や親族が誰かの相続人になる場合、遺産分割が思わぬトラブルに発展するようなことがあります。
以下では、事例を挙げながら、お伝えしていきたいと思います。
こんなことを聞いたことはございませんか。
これには、キチンとした理由があるのです。
今般は、この理由の一つについて、深掘りしながらお話していきたいと思います。
昨今、長寿を迎える人が増加している中で、遺産相続の問題はますます複雑化しています。
特に、認知症の配偶者や親族が誰かの相続人になる場合、遺産分割が思わぬトラブルに発展するようなことがあります。
以下では、事例を挙げながら、お伝えしていきたいと思います。
2.トラブル事例-遺産分割できない認知症の相続人
具体的な事例をご紹介します。
ある日、夫であるAさんが突然亡くなりました。
Aさんは遺言書を作成せず、この世を去ったため、相続人全員がどの財産を誰がどのように相続するかを話し合って決める(遺産分割協議)必要があります。
この際に生じる問題は、妻であるBさんは認知症を患っており、判断能力を失っていたということです。
認知症の方は、ご自身でご自身の意思を表示できない状況であり、その方を交えて話し合いをしたとしても、これは有効な話し合いであったと、法律上認められません。
こういった場合には、Bさんの代わりに意思表示を行う人(成年後見人)を選任してもらうか、Bさんが逝去されるまで手続を保留するかの2択になってしまいます。
ある日、夫であるAさんが突然亡くなりました。
Aさんは遺言書を作成せず、この世を去ったため、相続人全員がどの財産を誰がどのように相続するかを話し合って決める(遺産分割協議)必要があります。
この際に生じる問題は、妻であるBさんは認知症を患っており、判断能力を失っていたということです。
認知症の方は、ご自身でご自身の意思を表示できない状況であり、その方を交えて話し合いをしたとしても、これは有効な話し合いであったと、法律上認められません。
こういった場合には、Bさんの代わりに意思表示を行う人(成年後見人)を選任してもらうか、Bさんが逝去されるまで手続を保留するかの2択になってしまいます。
(1)認知症の人に対するサインや代筆のリスク
遺産分割に関わる重要なポイントとして、認知症のBさんに対して理解がない状態でサインさせたり、家族が代筆して遺産分割協議書を作成したりすることは避けるべきです。
判断能力のない人が遺産分割協議に合意した場合は無効になり、遺産分割のやり直しや相続紛争のリスクが生じます。
同様に、本人に意思が無い中で家族が代筆した場合も遺産分割は無効とされ、その結果として損害賠償請求や私文書偽造などの法的な問題まで生じる可能性もあります。
判断能力のない人が遺産分割協議に合意した場合は無効になり、遺産分割のやり直しや相続紛争のリスクが生じます。
同様に、本人に意思が無い中で家族が代筆した場合も遺産分割は無効とされ、その結果として損害賠償請求や私文書偽造などの法的な問題まで生じる可能性もあります。
(2)遺言書の重要性とメリット
ここで注目したいのが、遺言書の存在です。
例えば、生前のうちにAさんが遺言書を作成して遺していた場合には、Bさんの意思を相続に反映させることなく、手続を進めることができるようになります。
これは、Aさんの財産は、Aさんがどのように処分(もらう人を指定)しても、自由なことだからです。
遺言書がある場合、遺産分割協議を行う必要がありません。
つまり、本人の希望を尊重して、遺言書に沿って遺産分割が行われます。
遺言書があれば、相続人の中に判断能力を失っている方がいても、遺産分割に関する混乱を防ぐことができるといえます。
例えば、生前のうちにAさんが遺言書を作成して遺していた場合には、Bさんの意思を相続に反映させることなく、手続を進めることができるようになります。
これは、Aさんの財産は、Aさんがどのように処分(もらう人を指定)しても、自由なことだからです。
遺言書がある場合、遺産分割協議を行う必要がありません。
つまり、本人の希望を尊重して、遺言書に沿って遺産分割が行われます。
遺言書があれば、相続人の中に判断能力を失っている方がいても、遺産分割に関する混乱を防ぐことができるといえます。
(3)成年後見のデメリット
一方で、遺言書のない場合は、遺産分割協議を行うために成年後見制度を利用することが考えられます。
こんな成年後見制度ですが、多くのメリットもありますが、デメリットも存在します。
デメリットとしては、
・ 後見人の選定や手続きに時間がかかること
・ 財産管理や遺産分割に関して、第三者である方が家庭に入ってきてしまうという抵抗感
などが挙げられます。
また、後見人には、弁護士や司法書士等の専門家が選ばれる場合も多く、こういった場合には、毎月数万円の報酬の支払いが発生し、費用面でも負担が増えます。
こんな成年後見制度ですが、多くのメリットもありますが、デメリットも存在します。
デメリットとしては、
・ 後見人の選定や手続きに時間がかかること
・ 財産管理や遺産分割に関して、第三者である方が家庭に入ってきてしまうという抵抗感
などが挙げられます。
また、後見人には、弁護士や司法書士等の専門家が選ばれる場合も多く、こういった場合には、毎月数万円の報酬の支払いが発生し、費用面でも負担が増えます。
3.さらに対策:家族信託の活用
遺言書を検討している方の中には、認知症の家族にも財産を残したいと希望していることがあります。
しかし、遺言書に記しても、認知症の方は遺された財産を有効に使用することは難しく、本人が認知症であることが金融機関に知れられると、口座が凍結されてしまうこともあります。
こうした状況では、家族信託の活用を検討することが重要です。
家族信託は、認知症の方に代わって指定した受託者が財産管理を行い、認知症の方のために遺産が適切に管理・活用される仕組みです。
先ほどの例で言えば、Aさんが認知症の妻Bさんのために遺言書で財産を残しても、Bさんが認知症となってしまうと、財産は凍結されてしまいます。
一方、Aさんが生前の元気な内に、家族信託を利用し、Aさんと同居する親族などを受託者に指名しておくことで、Aさんの死後にその親族(受託者)が妻Bさんのために遺産を管理し、生活費や医療費など必要なサポートを行うことができるようになります。
家族信託という法的な仕組みで、遺産をスムーズに承継し認知症の方の将来にも安心感をもたらすことができます。
しかし、遺言書に記しても、認知症の方は遺された財産を有効に使用することは難しく、本人が認知症であることが金融機関に知れられると、口座が凍結されてしまうこともあります。
こうした状況では、家族信託の活用を検討することが重要です。
家族信託は、認知症の方に代わって指定した受託者が財産管理を行い、認知症の方のために遺産が適切に管理・活用される仕組みです。
先ほどの例で言えば、Aさんが認知症の妻Bさんのために遺言書で財産を残しても、Bさんが認知症となってしまうと、財産は凍結されてしまいます。
一方、Aさんが生前の元気な内に、家族信託を利用し、Aさんと同居する親族などを受託者に指名しておくことで、Aさんの死後にその親族(受託者)が妻Bさんのために遺産を管理し、生活費や医療費など必要なサポートを行うことができるようになります。
家族信託という法的な仕組みで、遺産をスムーズに承継し認知症の方の将来にも安心感をもたらすことができます。
4.アプローチ方法:遺言書への話し掛け方
例えば、自身の両親に相続対策をしておいて欲しいと思っていても、親との話題にはしにくいと感じる方も多くいらっしゃいます。
私は仕事柄その必要性を強く感じていましたので、遺言書や信託その他の制度を活用し、できうる限りの対策を親と一緒にしています。
遺言書や家族信託などの相続対策は、将来のことを考える重要な一歩でもあります。
アプローチの方法としては、以下のヒントが参考になるかもしれません。
・優しい会話から始める:普段の会話の中で相続について、さりげなく尋ねてみましょう。
「遺言書のこと考えたことある?」と問うことで、話題が自然に広がります。
・身近な事例を共有:身近な友人や家族の事例から、遺言書のメリットを説明してみましょう。
エピソードを通じてアプローチしやすくなります。
・自分の意向を伝える:自身が遺言書を検討していることを伝え、親自身にも考える機会を提供してみましょう。
・専門家の意見を聞く:司法書士や弁護士の意見を取り入れて、遺言書のメリットを説明してみましょう。
専門家のアドバイスを通じて親に安心感を与えることができます。
・興味を引く情報提供:雑誌やウェブサイトから遺言書に関する情報を持ち出してみましょう。
関連記事を渡してみることで親が情報を得るきっかけになるかもしれません。
・感情を共有する: 親との率直な対話で、自身の不安や思いを共有してみましょう。
本来、遺言書の効力は死後に生じるものですが、親の中には遺言書を書くと同時に自分の財産が取り上げられてしまうのではないかと心配して、一歩踏み出せない方も多いようです。
親の感情と考えを尊重しつつ、正確な情報を提供して安心感を与えるように心がけましょう。
私は仕事柄その必要性を強く感じていましたので、遺言書や信託その他の制度を活用し、できうる限りの対策を親と一緒にしています。
遺言書や家族信託などの相続対策は、将来のことを考える重要な一歩でもあります。
アプローチの方法としては、以下のヒントが参考になるかもしれません。
・優しい会話から始める:普段の会話の中で相続について、さりげなく尋ねてみましょう。
「遺言書のこと考えたことある?」と問うことで、話題が自然に広がります。
・身近な事例を共有:身近な友人や家族の事例から、遺言書のメリットを説明してみましょう。
エピソードを通じてアプローチしやすくなります。
・自分の意向を伝える:自身が遺言書を検討していることを伝え、親自身にも考える機会を提供してみましょう。
・専門家の意見を聞く:司法書士や弁護士の意見を取り入れて、遺言書のメリットを説明してみましょう。
専門家のアドバイスを通じて親に安心感を与えることができます。
・興味を引く情報提供:雑誌やウェブサイトから遺言書に関する情報を持ち出してみましょう。
関連記事を渡してみることで親が情報を得るきっかけになるかもしれません。
・感情を共有する: 親との率直な対話で、自身の不安や思いを共有してみましょう。
本来、遺言書の効力は死後に生じるものですが、親の中には遺言書を書くと同時に自分の財産が取り上げられてしまうのではないかと心配して、一歩踏み出せない方も多いようです。
親の感情と考えを尊重しつつ、正確な情報を提供して安心感を与えるように心がけましょう。
5.まとめ
高齢の親や親族に認知症の方がいる場合、相続トラブルのリスクが高まります。
遺言書や家族信託の活用は、遺産分割の問題を解決し、そして認知症の家族をサポートできる有効な手段となり得ます。
親が相続対策をしていない場合には、家族とのコミュニケーションを大切にしながら、信頼関係を築いて進めることが大切です。
ぜひ司法書士や弁護士のサポートを受けながら、円満な相続を実現するために、将来の計画を立ててみてはいかがでしょうか。
それが両親のためでもあり、遺される家族のためとなると思います。
遺言書や家族信託の活用は、遺産分割の問題を解決し、そして認知症の家族をサポートできる有効な手段となり得ます。
親が相続対策をしていない場合には、家族とのコミュニケーションを大切にしながら、信頼関係を築いて進めることが大切です。
ぜひ司法書士や弁護士のサポートを受けながら、円満な相続を実現するために、将来の計画を立ててみてはいかがでしょうか。
それが両親のためでもあり、遺される家族のためとなると思います。