自筆証書遺言の作成方法と自分で作るリスク:専門家に依頼する重要性を司法書士が解説

相続コラム

2023.08.23

1.はじめに

ご自身やご両親の終活を考える際、遺言書の作成を検討される方が増えています。

特に手軽な自筆証書遺言は人気ですが、誤った書き方や疑わしい事情があると、無効になったり、紛争が生じるリスクがあります。

この記事では、自筆証書遺言の作成方法とリスクについてわかりやすく解説し、司法書士や弁護士などの専門家に依頼することのメリットについてもご紹介します。

2.自筆証書遺言とは

遺言書は、自分の死後、財産を誰に・どのように引き継いでもらうかを決めておくことができる文書です。

また、ご自身の想いや、遺言を作成した理由なども遺すことができる上、遺された親族の負担を減らすことができるものでもあります。

遺言書が作成してあれば、相続人間で遺産をどのように分けるかといった話し合いをする必要がなくなるため、相続人間での紛争予防に役立つ他、遺言書が無かった場合と比べて、簡便に相続手続を完了させることができます。

遺言の中でも、ご自身で作成するものを自筆証書遺言といいます。

この要式は、公証役場で手続きをする公正証書遺言と比べて手軽に作成できるため人気がありますが、注意も必要です。

3.自筆証書遺言を作成する方法

自分で遺言書を作成する方法とポイントを簡単にご説明します。

 ①  タイトル:「遺言書」や「遺言」と書きます。

 ② 書き出し:自分が作成する遺言であることを明記します。例えば「遺言者広島太郎は、本書により、次のとおり遺言する」といった書き方です。

 ③  遺産の分配方法を書く:具体的な遺産を、誰にどれだけ相続させたいか明記します。


  預貯金の場合は、金融機関名、支店名、口座番号

  不動産の場合は、登記簿に従って、所在・地番・地目・地積(建物なら所在、家屋番号、構造、床面積)

  を記載した上で、遺言者の長男何某に相続させるなどと記載します。

 ④ 日付と署名:作成した日付と、本人の住所氏名を記載し、その隣に印鑑を押します。

(1)作成のポイント

・ 自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押すこと。

・ 遺言とは別に遺産目録を作成する場合には、目録については、自書することは要しません。
  ただし、この遺産目録には、遺言者が毎葉に署名し、印を押すこと。

・ 加除その他の変更は、遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押すこと。

・ これらの内容に加え、財産をどう分けるかを決めた理由や、家族へのメッセージを書いておくと、その後の紛争防止にも役立ちます。
  例えば、生前に長女に1000万円の援助をしていたため、次女に1000万円多く相続させようとお考えになったなら、遺言書にその事情を書いておくと、長女から異議が出にくくなります。

(2)保管の方法

自分で保管する方法もありますが、見つけてもらえなかったり、紛失したりするリスクもあるので、信頼できる人に預けておく方法もあります。

また、遺言の内容で、作成した遺言を実現する方(遺言執行者)を指定しておけば、その方が手続のすべてを行うことができるため、この方に預けておくという方法もあります。

また、昨今新規導入された、法務局の自筆証書遺言の保管サービスを利用すると、紛失防止の効果の他、死後の手続も一部省くことができます。

なお、自筆証書遺言の保管サービスの詳細は、次のリンクをご参照下さい。

4.自分で作成した場合のリスク

自筆による作成は、簡便に作成することができますが、その反面デメリットも多くあります。

日本における遺言の制度は、作成の方法が法律により要式化されており、これに違反して作成された遺言は、無効とされることがあります。

また、遺言書の内容が不明確だったり、遺産の分割方法に偏りがあったりすると、家族間の争いや混乱を引き起こす恐れもあります。

遺言書作成の目的は、「紛争を予防すること」、「遺言者の想いを叶えること」にあると思います。

しかし、折角決心して作成した遺言書に、無効となる原因があれば、紛争を予防することも、遺言者の想いを叶えることもできなくなります。

また、高齢者が遺言書を作成する場合には注意が必要です。

遺言書の内容に納得しない相続人がいると、遺言書作成時、遺言者の認知能力は低下しており、遺言書は無効であると主張されて争われることも考えられます。

また、自筆証書遺言は自宅で作成できますので、相続人の一人が作成の現場に立ち会った場合に、他の相続人からそそのかしたのではないか、本人の意思ではないのではないかと言った具合に、こういった理由でも遺言の有効性が争われることもあります。

5.司法書士、弁護士などの専門家に依頼するメリット

これらのリスクを避けるためには、司法書士や弁護士など専門家のサポートを受けることが重要です。

司法書士や弁護士は、遺言書作成から死後の相続手続きに至るまでのプロです。

ご自身やご家族の状況に合わせて、自筆証書遺言か公正証書遺言か、相続トラブルを避けるためのポイントや手続き等に関して適切なアドバイスを受けることができますので、作成した遺言書の内容をそのまま実現する可能性も高まります。

作成方法が簡単だからと言って、作成だけしている状況よりも、一度専門家にご相談されてみることをお勧めします。

今のままでもいいという判断から、更にこうした方が良いといったアドバイスを受けられると思います。

6.自筆証書遺言に関するよくある質問

遺言書の作成について、よく寄せられる質問に対して簡潔に解説します。

・ 検認手続きとは?

自筆証書遺言の場合、遺言者が亡くなった後に「検認」という裁判所の手続きが必要です(法務局の保管サービスを利用した場合を除く)。

この手続きは、遺言書の形状や内容を確認し、検認以降に遺言書が偽造されることを防ぐ役割があります。

通常は申立から2~3か月ほど期間がかかり、戸籍の取得や申立人の出席が求められます。

なお、検認手続きは、遺言書の内容が有効かどうかを判断するものではありません。

検認を受けたとしても、相続人から遺言作成時の判断能力などを理由に無効主張される可能性もあります。

・ 自筆証書遺言と公正証書遺言の違いは?

自筆証書遺言は、本人が自分で手書きする遺言書です。

一方、公正証書遺言は、公証人が本人の意志をもとに作成し、証人の立ち会いのもとで手続きが行われます。

公正証書遺言は公証役場で保管され、遺言者の死後は検認手続きなしで相続手続きが可能です。

公証人への手数料がかかりますが、作成時点で、公証人と証人が本人の意思を確認しており、本人は作成のために公証役場まで出向いている点から、真意に基づいて作成されたものと推定されやすいことから、信頼性と安全性が高い方法です。

7.まとめ:専門家のサポートを活用して安心な遺言書作成を

遺言書は、家族や財産に対する最後の想いを形にする重要な文書です。

また、作成の時点で、家族とも話し合った上で、その内容を遺言書にしておくと、より紛争防止に役立つと言えます。

専門家のサポートを活用しながら、大切な財産を円満に次世代に承継させてはいかがでしょうか。

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木村 洋佑

この記事を書いた人

木村 洋佑 Kimura Yousuke

1984年、広島市生まれ。
2007年、駒澤大学法学部を卒業後、検察事務官として東京地方検察庁に入庁。
2012年、東京高等検察庁を最後に検察庁を退職し、2013年には司法書士の資格を取得。
2014年、資格研修終了後、広島市内の司法書士事務所に就職。
4年半の勤務を経て、
2018年7月、司法書士木村事務所を開設。

現在、広島市など広島県全域について、相続や遺言、信託に関するお困り事を中心に解決しています。

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