はじめに
相続という言葉が挙がると、多くの方にとって複雑で難解なものと感じられるでしょう。特に未成年者や判断能力のない子供が相続人となる場合、その複雑さは一層増します。この記事では、未成年者の相続に焦点を当て、法的手続きやトラブル解決のポイントについて分かりやすく解説します。
そもそも成人は何歳から?
日本において、法的な成人の年齢は18歳です。18歳に達すると、一般的な法的権利や責任を持つ成人として扱われます。18歳未満の未成年者が、契約や遺産分割等の法的な権利を行使するためには親などの法定代理人が必要です。
未成年者の遺産分割協議
亡くなった方が遺言書を残さなかったり、遺言書に記載がない財産があったりすると、相続人全員で遺産分割協議を行い、遺産を分割します。未成年者が遺産分割協議に直接参加することはできないため、法定代理人が代わりに参加します。
未成年者の代わり:法定代理人や特別代理人
通常は未成年者に代わって、法定代理人である親が遺産分割協議に参加します。しかし、親自身も相続人である場合、特別代理人を家庭裁判所で選任してもらい、その特別代理人が遺産分割協議に参加することになります。これは、親が相続人でありながら、子の法定代理人としても遺産分割協議に参加すると、利益が相反する行為(利益相反行為)になるためです。なお、子に有利な遺産分割になるとしても、特別代理人の選任が必要になります。
特別代理人について
・特別代理人の役割
特別代理人は、遺産分割協議において親と子の利害が対立する場合や、親が代理人になれない場合に、家庭裁判所に申し立てて選任される代理人です。
・代理人の候補者
特別代理人には、家庭裁判所で選ばれる代理人だけでなく、候補者を立てることもできます。親戚や友人を候補者に指定することも可能です。候補者がいないと弁護士等の専門家が特別代理人に選ばれるため、報酬が発生します。
・申立て手続き方法
特別代理人の選任手続きは、子の居住地を管轄する家庭裁判所に申し立てを行います。申し立て人は親や利害関係者であり、必要書類としては、親と子の戸籍、遺産分割協議書案、特別代理人候補者の住民票などが挙げられます。
・手続きの依頼先
特別代理人の申立て手続きは、司法書士や弁護士に依頼することも可能です。専門家に相談することで手続きがスムーズに進み、適切な代理人が選ばれるでしょう。
よくある質問
Q.未成年の相続人が複数います、特別代理人は1人でいいですか?
A.相続人となる未成年者が複数いる場合は、それぞれに特別代理人を選任する必要があります。
Q.親が相続放棄をしました、代わりに未成年の子に代わって遺産分割協議に参加できますか?
A.親が相続放棄をした場合、親は遺産分割協議に参加することができます。
Q.未成年の子の相続放棄をしたい、親が代わりに手続きできますか?
A.親も相続放棄している場合は、子の相続放棄ができます。一方、親が相続する場合は、子の相続放棄はできません。これは利益相反行為にあたるためです。この場合、子のために特別代理人を選任して、特別代理人が相続放棄を行うことになります。
Q.未成年の孫に財産を残したいが、無駄遣いせずに、教育や婚姻のために使ってほしい。
A.遺言書で孫に財産を残すだけでは、具体的な使い道を指定することは難しいです。遺言書の付言事項で希望や意向を残すことはできますが、拘束力がありません。もし、資産を特定の目的に使ってほしい場合は、家族信託が役立ちます。これは特定の財産を信頼できる人(受託者)に預けて、信託受益者である孫が未成年のときに使うべき具体的な目的を契約で定めるものです。例えば、金銭を管理する受託者として他の親戚を指定し、孫が教育や結婚のために必要とするときに、契約に従って金銭を提供することができます。
Q.離婚した元旦那が亡くなりました、未成年の子は相続人になりますか?
A.はい、離婚した元配偶者が亡くなった場合、未成年の子も相続人となります。この場合、元配偶者が親権者であるかどうかに関わらず、相続人として認められます。なお、離婚した母親自体は相続人になりません。そのため、未成年の子に代わって法定代理人として遺産分割協議に参加することができます。
Q.遺産分割協議のために選ばれた特別代理人は、いつまで任務を行うのですか?
A.特別代理人が遺産分割協議のために選任された場合、遺産分割協議が完了すると、特別代理人の業務も終了します。したがって、以降の子と親の関係については、通常通り法定代理人が機能します。
さいごに
未成年者の相続は複雑な場合がありますが、大切なのはお子さんの未来を考えながら、遺産に関する基本を知ることです。未成年者の相続に関しては、専門家のサポートが非常に重要です。司法書士や弁護士に相談することで、法的なアドバイスや適切な手続きについての指針を得ることができます。相続発生前においては、遺言書や信託も検討してお子さんにとって最良の方法を見つけましょう。